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コーヒーブレイク(3) ”近代栄養学”の間違い

コーヒーブレイク(3) 鈴木修一著

”近代栄養学の間違い”

(夏目漱石と森鴎外)

明治の文豪たちの中では、同じく甘党だった夏目漱石や森鴎外も、子規と同じ“白砂糖の悲劇”に見舞われています。夏目漱石(1867~1916)は、タバコも好んで吸いましたが牛肉や砂糖も大好きで、やはり甘党で大食漢でしたが、49歳で亡くなっています。森鴎外(1862~1922)は東京帝大医学部出身のお医者さんでしたが、やはり大の甘党で、ご飯に大福餅を乗せ、それにお茶をかけて食べる“大福茶漬け”が大好物でした。彼は60歳で亡くなっています。

正岡子規、夏目漱石そして森鴎外と3人とも同世代の人たちですが、その頃の時代背景はどうだったでしょうか。ヨーロッパでは“近代栄養学の父”と称された、カール・フォン・フォイト(1831~1908)というドイツ人医師の栄養学が幅をきかせていました。

(カール・フォン・フォイトの栄養学)

フォイト栄養学の2大原理
1. 肉などの動物タンパクは最高の優良食品で、植物タンパクは劣等食品である。したがって健康のためには、肉をたくさんとることが重要である、としています。
2. 生命エネルギーとは、食物が体内で酸化(=燃焼)するときに発生する。鉄の釜で食物を燃やしたときの熱量を測定し、その数値が人を動かすエネルギーとした。これが有名なカロリー理論であり、成人の一日の基礎代謝熱量は2400キロカロリーが必要で、それ以下だと餓死するとしています。

さらにフォイトの弟子の一人のマックス・ルブナーは「肉は文明のシンボルであり、優良なタンパク質摂取は文明人の権利である」と宣言し、肉食をアメリカ/ヨーロッパなどの先進国に普及させました。その結果、アメリカは肥満/心臓病/ガンなどの成人病大国になってしまいました。それに危機感を抱いたジョージ・マクガバンというアメリカの立派な政治家が登場して、アメリカの専門家たちの叡知を結集させ、1977年に5000ページにも及ぶ「マクガバン報告」として結実させ、アメリカが病人大国になった原因は、肉食/脂肪/高カロリー/砂糖の摂りすぎであるという結論に至ったのです。

明治の悲劇は、“脱亜入欧”“富国強兵”のスローガンのもと、西欧文明を取り込むのに急ぐあまり、医学や栄養学においても西洋医学/西洋栄養学を無批判に取り入れ、国策として日本中に普及させました。当時のドイツ栄養学会は、「砂糖は不純物ゼロで吸収が早い素晴らしい栄養食品」とか「砂糖消費量こそ文明のバロメーター」といって、白砂糖消費を大々的に宣伝していたのです。このワナに引っかかったのが明治の特権階級/財界人/知識人/芸術家などで、“高価な白いぜいたく品”を栄養食品と信じて群がったのです。

“時代のトレンド”や“世間の常識”というものが、いかにあてにならないかという見本のような出来事でした。

- To be continued -